
南大沢の風は、いつも背中を押してくれる。まるで、僕たちの秘密の共有者みたいに。 | 青春小説 作品
南大沢の風は、いつも背中を押してくれる。まるで、僕たちの秘密の共有者みたいに。 「任せろよ、お前と一緒なら、どんな壁だって乗り越えてやる。」 あの日の言葉が、今も耳に残っている。あいつと組むなら、どんな潜入も怖くない。それは、ただの気負いとか、勢いとか、そんなものじゃなかった。二人の間には、言葉にならない信頼があった。 夏休み、蝉の声がアスファルトの熱気を揺らしていた。僕たちは、学校の裏山にひっそりと佇む、廃部になった天文部の部室に潜入していた。目的は、伝説の「星屑の標本」を見つけること。先輩たちが残したという、夜空から採取したという不思議な標本。それは、僕たちだけの夏休みの冒険の始まりだった。 部室は埃っぽく、古びた教材が並んでいた。窓から差し込む光が、舞い上がる埃をキラキラと照らす。あいつは、物怖じもせず、棚の奥や引き出しの中を次々と探っていく。僕は、その様子を横目に、窓の外を流れる雲を眺めていた。 「おい、これ、なんか変だぞ。」 あいつの声に、僕は我に返った。棚の奥から、古びた木箱が出てきたのだ。箱を開けると、中には色とりどりのガラス玉のようなものが、ぎっしりと詰まっていた。それらは、まるで夜空に散らばる星々のように、鈍く光っていた。 「これが、星屑の標本…?」 僕たちの顔に、期待と興奮が入り混じる。でも、どこか物足りない。伝説には、もっと神秘的な何かが隠されているはずだ。 「待てよ、この箱の底。なんか、文字が書いてある。」 あいつが、箱の底を指差す。そこには、かすれたインクで、古風な文字が刻まれていた。それは、まるで詩のような、暗号のような、掴みどころのない言葉だった。 「…星は、見上げる者だけのものではない。掴もうとする者、分かち合う者…その手に宿る。」 文字をなぞりながら、あいつが呟いた。 「掴む…?」 僕たちは顔を見合わせた。この標本を、どうやって「掴む」というのだろう。 その夜、僕たちは集めた標本を、秘密の場所である公園のベンチに並べた。静まり返った夜空には、無数の星が瞬いていた。僕たちは、言葉を交わすこともなく、ただ星空を見上げていた。 ふと、あいつが「掴んでごらん」と言った。 何を? 僕は、そのガラス玉の一つを手に取った。ひんやりとした感触。そして、その瞬間、空に浮かぶ星が、僕の手に吸い込まれるような感覚に襲われた。まばゆい光が、僕の手の中に現れ、そして消えた。 「…うわっ!」 僕の声に、あいつが驚いた顔でこちらを見た。 「どうした?!」 「いや、なんか、光ったんだ。僕の手の中で。」 あいつは、すぐに自分の手に標本を握りしめた。そして、数秒後、彼の顔に驚愕の色が浮かんだ。 「俺もだ…!なんだこれ!」 僕たちの手は、まるで小さな星屑を宿したかのように、微かに光っていた。それは、触れることのできないはずの、夜空の輝き。 「…秘密だ、これは。」 あいつが、低く言った。 「ああ、秘密だ。」 僕も、頷いた。 南大沢の夜風が、僕たちの秘密を運んでいく。あの日の、星屑の標本。それは、僕たちだけの、青春の証になった。あいつと組むなら、どんな冒険も怖くない。なぜなら、僕たちには、夜空さえも掴むことができる、秘密があったから。 生成に使用したデータ 小説のジャンル: 青春小説 GeminiModel: gemini-2.5-flash-lite GeminiImageModel: gemini-2.5-flash-image




